TOKYO2020

支える2020の仕事

喉が渇けば寄付の機会?東京2020パラリンピックを目指すアスリートを自販機で支援

株式会社リクルート
サステナビリティ推進室
鎌内 由維
株式会社リクルート所属
株式会社リクルートオフィスサポート勤務
車いすテニス選手(クアードクラス) 5位(2020年7月現在)
菅野 浩二

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■車いすテニスをはじめたきっかけは受け継いだ車いす

「競技用車いすはすごく高価なんですよ。日常生活で乗る車いすは、国から補助も出ますが、競技用車いすは補助もないので、定価購入すると30~50万円以上します。譲っていただけたことと、バスケと違ってテニスなら少人数でできるし、健常者とも一緒にできると思い、始めたんです。」

リクルート所属アスリートである車いすテニス選手の菅野浩二(すげのこうじ)さんが競技をはじめたきっかけは、友人から「新調したから」と譲り受けた競技用車いす。高校ではバスケ部に所属、高1の頃に交通事故に遭い頚椎損傷となったあと、車いすバスケをしていたが、就職などでチーム練習への参加が難しくなり、スポーツから遠ざかる。そんな彼を、車いすが引き戻すことになった。

車いすテニスをはじめたのは2001年頃。着々と実力を身に付け、2016年には男子クラスの上位選手だけが出られる大会にも出場した。この大会出場は、菅野さんがテニスを始めたときに目標としていたものだ。車いすテニスを始めて5年で、そこに到達できたとは驚愕すべきことだ。しかし、菅野さんは、男子クラスでさらに上位を目指すのはむずかしいと感じていた。車いすテニスのクラスには、男子、女子、そして三肢以上に障がいを持つ選手に限られた「クアード」の3つがあり、握力が弱いなどの障がいもある菅野さんは本来であればクアードクラスに相当するからだ。
しかし、大会後、ある車いすテニス選手との話の中で「クアードクラスでパラリンピックを目指せるのでは」と言われたことをきっかけに 「パラリンピック出場」という新たな目標が生まれた。

「クアードクラスへの転向の審査に通ると、それまで可能だった男子クラスへの出場もできなくなるんです。『これは本気でやらないと』と、思いましたね。」

しかし、ある大きな壁があった。それは練習時間の確保だ。菅野さんはリクルートオフィスサポートに勤務するフルタイムで働く社員。それまでは「たとえ負けても楽しければいい」と考えていたこともあり、仕事後や休日だけの練習で事足りた。だが本気で目指すなら―。

そこで上司に相談し、社内の「アスリート支援制度」を活用することになった。

■東京2020パラリンピック出場を見据えて社内制度を活用

アスリート支援制度は「週5日勤務の中で2.5日までを競技活動に使える」というリクルートの社内制度で、社員である車いすバスケットボールの村上慶太選手の提案からはじまった。これまでは必要ないと考えていた菅野さんだが、クラス転向と東京2020パラリンピック出場を目指すにあたり活用を開始。現在は、2日を練習に、3日を業務にあてている。

制度活用にあたって、業務内容にも変化があり、また社内外でのメディア露出が増えた。

「現在のメイン業務は、社内広報誌の記事制作です。社内の方をインタビューしたり、自分が遠征に行ったときの話を書いたり。そういうこと(インタビュー)は元々苦手だったので、上司が練習のためにやらしてくれているというのもあると思います。」

元々は10年以上フルタイムで働いていたこともあり、アスリート支援制度に対する菅野さんの思いは特別だ。それは競技に対する姿勢にも変化を与え、またフィジカル面でもメリットがあるという。

「みんなが働く時間に練習させてもらえるって、贅沢ですよね。今までは趣味でやっていましたが、支援制度を利用することで競技も仕事であり結果を出さなきゃと思うようになりました。また、毎日アスリート活動できるほど年齢的にも若くない。仕事をする時間に体を回復させる意味もあり、アスリート支援制度をうまく活用させてもらっています。」

そんな菅野さんの東京2020パラリンピック出場を支えるものは、社内制度だけではない。

■「アスリート支援自販機」で社内に菅野選手の活躍を知ってもらう

リクルートに設置された一風変わった自販機。パラリングという文字と、前面にラッピング装飾された二人のアスリート。このうち一人が、菅野さんだ。この自販機でドリンクを購入すると、売り上げの一部が、菅野さんが所属する団体も含めた競技団体に寄付される。

仕掛け人は、同じリクルートの社員であり、サステナビリティ推進室に所属する鎌内さんだ。この部署では、2015年に国連で採択された2030年の国際目標「SDGs※」に対して、環境・人権・障がい者支援&理解などといった問題に社内の各部署と連携して取り組んでいる。※Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称

リクルートは「パラリング」 (「パラダイムシフト(考え方の変化)」+「リング(輪)」の造語)を掲げ、障がいの有無に関わらずそれぞれが活躍できる社会の実現を目指す活動に取り組む。これは以前から掲げる「一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す」とも合致する。そして、このアスリート支援自販機もまたパラリングの活動のひとつだ。

「リクルートには東京2020パラリンピック出場を目指してアスリート支援制度を活用する社員が4名おり、これまでも彼らと協力しながら車いす体験会などのイベントを開いてきました。だけどそうした場に来る方は、元々関心は高い。そうでない人に間接的に障がい理解や支援活動とどう接点を持ってもらうかはずっと課題だったんです。」

そこで、メーカー企業の協力のもと誕生したものがアスリート支援自販機。「(社内に設置することで)仲間に、仕事と競技活動を両立し、東京2020パラリンピックを目指すパラアスリートがいると知ってほしい。」「そんな理解から支援につながってほしい。」と、ラッピングには、菅野さんと、同社員であるシッティングバレーボール選手の田澤さんの写真をあしらった。

設置を進める上で、困難も多かったが、思いを同じくする仲間も増えた。この草の根活動が、回り回って菅野さんをはじめとしたパラリンピックを目指すアスリートたちの力となり、その競技を通して多くの感動や新たなアスリートを生み出していくことだろう。

アスリート支援自販機の左脇には競技用車いすが置かれており、触れたり座ったりできるようになっている。実はこれもまた、菅野さんが譲り受けた車いすで、買い替える時期と自販機の設置が重なり提供したもの。鎌内さんによれば、設置後に自販機の売上も上がったという。

売上は寄付となり、菅野さんが所属する団体も含めた競技団体へ。これは海外遠征のコーチやトレーナーの帯同という形で選手を支援する。車いすを譲り受けた菅野さんが車いすテニスをはじめ、アスリート支援制度で更なる上を目指し、譲り受けた車いすはアスリート支援自販機を支え、その寄付は東京2020パラリンピックを目指すパラアスリートを支えている。

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