TOKYO2020

支える2020の仕事

誰にでも働く機会を。
障がいに関係なく、その人に合う仕事は必ずある

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
総務局 人事部 採用課長
朱 賢太(写真中央)
リクルート
オリンピック・パラリンピック準備室
グループマネージャー
岩本亜弓(左)
リクルート
障がい者職業生活相談員
佐藤真衣(右)

up

障がい者雇用は政策として促進されているが、仕事や職場とのマッチングにまだまだ課題が多いのが現状だ。
働きたいと望む人が誰でも働ける世の中をつくる――その志を同じくし、朱 賢太、岩本亜弓、佐藤真衣の3人はそれぞれの立場から、障がい者雇用の扉を大きく広げようと奮闘している。

東京2020組織委員会は、パートナー企業や東京都・自治体からの出向者、そして組織委員会の直接雇用や派遣の職員など、さまざまな人々で成り立っている。朱 賢太は、組織委員会の採用課長として、人材の採用活動を采配している。

組織委員会では、多くの障がい者の方が活躍している。「障がい者が組織委員会でどのように活躍しているか。東京2020大会では『ダイバーシティ&インクルージョン』を大会ビジョンの実現のために大切にしています。ダイバーシティは“多様性”、“一人ひとりのちがい”を指し、インクルージョンは、“包括・包含”、“受け入れる・活かす”という意味を持ちます。『ちがいを知り、ちがいを示す』つまり、互いを理解し、多様性を尊重するからこそ、個々の人材が力を発揮できる。それが組織委員会の目指す姿です。
それを推進するという意味でも多様な方々に職員として参加してもらいたいという目標を掲げ、採用や出向の調整を進めてきました」

組織委員会は、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちの集まりであり、また、組織委員会の仕事は大会が終わると解散する、いわゆる「時限組織」という特殊性がある。

組織委員会のように限られた時間の仕事の中でどのように活躍する場を作り出していくか。そこが大きな課題だ。

組織委員会では日々異なる案件が動き、定型業務が少なく、業務量も変化する。ときには瞬間風速的に人の手が必要になることもある。朱は担当者と共に各部局の責任者と連携し、各部署の仕事の特性を踏まえながら、障がい者一人ひとりに合った仕事を考えている。

「我々職員達もダイバーシティへの思いを持っていますが、具体的にどのようにすればよいのか知識と経験を持っている人は多くありません。それぞれの方が活躍できる仕事を見つけたり、生み出していく体制をつくる必要がありました。配属先の職場環境と周りの理解を進める中で、さまざまな仕事に取り組んでもらえるようになっています」
事務所内の業務に携わっていた人も、今後は会場の現場に出て運営を支える仕事に携わることもあるそうだ。

岩本亜弓はリクルートで東京2020オリンピック・パラリンピックを契機に障がい者雇用が促進されるよう支援できないかと考えていた。その中で、雇用する側と障がい者の間にあるミスマッチを目にする。
「身体障がい者の方はアクセシビリティさえ対応すればさまざまな業務に対応できることが多い。一方、精神障がい者の方は症状が目に見えない場合もあります。ですから、ご自身が自分の症状をどのように認識しているかということや、障がい者手帳の内容・詳しい病識といった情報を、雇用する側も正しく知ることが大切になってきます」

そこで、障がい者の就職活動を支援するツールを開発した。
障がい者の就職活動では履歴書・職務経歴書のほかに、障害者手帳の種類や取得時期、病歴、病識などの情報提出が必要となる。通常、健常者でも就職活動では応募企業ごとに書面を作成するが、障がい者の場合は本来伝えるべきことが多く、求職者・企業双方に何が重要な情報なのかが不明確な状態でもあった。
そこで必要書類を可視化し、その内容を入力すれば、提出書面にまとまるというツールを開発。応募者は書類の入力が容易になり、採用する側も履歴書・職務経歴書・病識などの必要な事実情報を漏れなく把握できるようになり、障がい者と雇用側双方にとってよりよいマッチングの土台として活用が期待される。

佐藤真衣は、リクルートで障がい者雇用と斡旋の業務に携わって3年。精神障がい者の就職・転職サポート、さらに就職後の定着支援まで行うエキスパートだ。組織委員会に精神障がい者の斡旋も手掛けた。

佐藤は日々の仕事の中で、まだまだ障がい者に対して理解されている方は多くないことを実感している。
「精神障がい者の方は、入力作業のようなことしかできない、また、単純な作業以外の仕事をお願いしてはいけないのではないかと不安に思っている人がまだまだ多いようです。もちろん幅広くなんでも完璧にこなせる方は多くありませんが、同じ業務を9時から5時までミスなくこつこつ続けられる方もいれば、エクセルのマクロをつくるのが得意な方もいます。他の人にはできないような強みをみんなが持っているんですよ」

ではどのように仕事を依頼して、働き続けてもらうのか。そこで佐藤の実践的な解決のスキルが生かされている。
「ある仕事の中から、その人の強みが存分に発揮でき、長く続けられる業務を細かく切り出すことも私の仕事。どの企業においても、その人に合った仕事を切り出せないことはないと思っています。周りの人たちの知識と理解がなければコミュニケーション不足に陥り、仕事を長く続けられないということも起こります。そこもしっかりとフォローすることも大切です」

「障がい者の雇用を考えたときに、まず『できない事』に着目するのは間違っていると思うんですよ。『得意な事』に着目すべきです。」と朱は語る。
「障がい者の方は大会準備の中の膨大な事務作業を何時間でもきっちりとやり遂げ、すばらしい戦力となっています。車いすの人は、会議室や会場が車いすで入れるかどうかをチェックし、その情報がデータベースになっています。仕事を切り出す、というと、仕事を半分にするようなイメージがあるかもしれませんが、実は得意・不得意の仕分けなんです」

東京2020大会の開催まであとわずか。朱、岩本、佐藤の3人は、東京2020大会を通じて人材カテゴリーに『個』の尊重の考えが広がることに期待したいと語る。

「世の中には、お子さんを預けられないから働けない女性や定年退職後も働きたいけど働く場所がないという人たちがいる。障がい者の方々の、働きたいけど働けない、働く場所がないということも基本的には同じことだと思うのです。障がいもひとつの個性ととらえられる時代になっていってほしい。そして『働きたいけど働けない』という人たちが直面している社会の“不”を解決するきっかけとなっていくといいですね」(岩本)

「障がい者への固定観念がなくなり、一人でも多くの人がその人らしく働ける社会になっていってほしいですね」(佐藤)

朱も組織委員会の採用課長として大会を成功させるだけでなく、自ら手掛けた様々な雇用と働き方から、多様性の許容が進んでほしいと語る。
「東京2020だけでなく、その後の社会がどうなるか。そこにも目を向けてほしい。大会を通じて障がい者の活躍を目にすることも増えるはずです。これを契機にさまざまな偏見が少しでも減って「誰もが自分らしく働ける社会」が生まれてレガシーとなることが一番の目標です」

※障がい情報に関する申告書等作成ツールはこちら

SHARE

  • Twitter
  • facebook
  • LINE