TOKYO2020

支える2020の仕事

障がい者も健常者も一緒。
シッティングバレーボールを通して伝える
多様性の尊重

株式会社リクルートオフィスサポート
田澤 隼
(シッティングバレーボール選手)

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リクルートは、東京2020パラリンピック協賛を通じて、多様性のある社会を目指すために障がい者スポーツの体験会「パラリング」を展開している。2019年2月には、シッティングバレーボールの田澤隼選手と共に、横浜市の小学校で体験会を行った。

リクルートはサステナビリティ方針として5つの重点テーマを掲げている。その1つが「多様性の尊重」だ。目指すのは1人ひとりの個性が尊重される世界。障がいもまた個性の1つだ。障がいの有無に関わらず、1人ひとりの個性にふさわしい就労や活動の場を実現しようとしている。

例えば、リクルートの特例子会社である株式会社リクルートオフィスサポート。車いすバスケットボール、車いすテニス、シッティングバレーボールの選手やコーチが所属し、仕事とアスリート活動を両立させている。

パラリングは、そんなアスリートらと始めた活動だ。障がい者理解を広めようと、各地での障がい者スポーツの体験会やアスリートによる講演を実施する。パラリングとは「パラダイムシフト(考え方の変化)とリング(輪)からとった造語だ。

2019年2月には、シッティングバレーボール選手の田澤隼が、横浜市の小学校で体験会を行った。シッティングバレーボールとはその名の通り、尻を床につけたままの座った姿勢でプレイするバレーボールだ。手を使わなければコート上を移動できないのに、手でボールを受けないといけない。はじめて見るスポーツに戸惑う子どもたち。普段はスポーツを得意にしている子でも、股関節が固いと動けないという。「でもみんな、目がキラキラしてました」と田澤選手。「バレーボールというのは、全員でつながることが楽しいスポーツですからね」1つのボールをつないでいくと、チームの絆が生まれる。チームでもぎ取るからこそ、たった1点が嬉しい。怪我をする前から、そんなバレーボールのことが田澤は好きだった。

しかしパラリングは、障がい者スポーツの面白さを伝えるだけの場ではない。「自分が伝えたいのは、『障がいを持っていても持っていなくても一緒なんだよ』ということです。手助けが必要なこともあるけれど、それ以外は普通の人と変わらずに生活しているし、こうしてスポーツも楽しんでいる。そんなことを子どもたちに知ってほしいと思っています」

小3からバレーボールを始め、高校時代は春高校バレーに出場、社会人になっても青森の社会人チームでバレーを続けていた田澤。しかし、祖父母が営むリンゴ農園を手伝っていたある日、事故が起きた。リンゴを運ぶ機械を運転中に坂から転落し、右足を失った。リハビリに励み、4カ月後には義足をつけてバレーの練習に復帰したが、膝を使う動きができなくては試合出場は難しい。「チームに貢献できないことが辛かったです」

「でも障がいを負ってからのほうが、新しく始めたことが多い気がするんです」

「『怪我をする前にやっておけばよかった』と後悔するより、『怪我をしてからでもやれるんだ』と思いたい」と、スノボを始め、ボウリングを始め、バドミントンを始めた。シッティングバレーボールは障がい者スポーツセンターを通じて知った。バレーボール歴18年の実績を買われ、すぐに代表の強化合宿に参加。「まずは見学だけ、という話で呼ばれたんですけどね(笑)。『見るだけじゃ物足りないでしょ』と言われて」今では、日本代表として17年アジアパラ競技大会5位、18年世界選手権15位などの実績を持つ。

障がい者も健常者も変わらない。その思いの背景には、事故後の経験がある。「怪我をする前は『全部1人でやらないといけない』と思いこんでいました。怪我をした後も最初はそう思っていた。でもわかったのは、人は誰かに頼らないと生きていけないということ。それから、怪我をする前も後も、僕はずっと誰かに助けてもらいながら生きていた、ということです。みんな、誰かを頼って生きている。その点は、障がい者も健常者も変わらない、と考えるようになりました」

体験会の参加者の多くは、障がい者と接したことのない子どもたちだ。田澤が日常生活や義足について話すと素直に興味を示すという。それが田澤には嬉しい。例えば義足1つとっても、膝下からの義足、膝上からの義足、骨盤からの義足といろんな種類がある。ダイビング用の足ヒレをつけるために足首を伸ばしたまま固定している義足もあれば、ヒールをはく女性専用の義足もある。

『お風呂に入る時はどうするんですか?」と質問されたこともあります。当然外して入りますが、そういうことも普通の人にはわからないんだな、と僕にとっても発見がありますね」

あるいは「義足あるある」。基本的に、義足をつけて歩いていると、まわりに気づかれないもの。だが満員電車に押し込められたときなど、他人の足に引っかかり義足が外れてしまうことがある。装着し直すのは簡単だが、一度外れるとズボンから義足が不自然に飛び出すので、周囲には驚かれる。「義足をつけていることに気づいてほしい、という気持ちはあるんです。こちらが大変なときに席を譲っていただければ、ありがたいと思います」

しかし逆に、田澤のほうからお年寄りに席を譲ることもあるのだ。「僕なりに、普通に生活しているんです」やはり、障がい者も健常者も変わらない。幸いなことに、シッティングバレーボールという競技そのものが、田澤が伝えたいメッセージを代弁してくれてもいる。

「シッティングバレーボールがいいのは、障がい者と健常者が一緒にプレイできるところ。特殊な器具もいりません。これは、どの障がい者スポーツにもない特徴。自分が思い描く、理想の競技です。東京2020大会に向けて、多くの人に見てもらう機会が増えればと思っています」

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