TOKYO2020

支える2020の仕事

人間の可能性は凄い。
車椅子技術者と
アスリートが
ベストを尽くすことで、
世界は変わる。

車椅子技術者

中島 浩貴

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ドイツに本社を置く総合福祉機器メーカー オットーボックジャパンの車椅子技術者である中島の普段の仕事は、競技用車椅子ではなく、日常生活用の車椅子を提案すること。そしてそのための営業や技術指導を行い、障がい者のあらゆるモビリティソリューションを提供している。パラリンピックの修理サービスチームの一員として北京2008パラリンピックに初参加。今回の東京2020で5度目の参加となる。

『パラリンピックに参加する修理サービスチームは約80人で、全世界のオットーボック社からプロフェッショナルが集まり総力をあげて修理に対応します』。驚いたことに、対応する競技用車椅子は、オットーボック製だけでない、世界のすべてのメーカーだという。無論、すべての車椅子競技に対応しなければならない。『毎回、種類もメーカーも初めて見るというモノの方がむしろ多いくらいです。その中でいかにその初めて見る競技用車椅子を今以上のものに仕上げるか。しかも試合中ギアにアクシデントが起きた場合は、その瞬間にあらゆる解決をしなければならない。時間との勝負。経験がまさに大事になってくるんです』。

滅多にあることではないが、試合中に故障があった場合は大変だ。修理の制限時間はわずか10分。あっても20分ほど。F1で言うところの、まさに「ピット」の緊張感。万が一車椅子のフレームが折れたら、もちろんそこで溶接も行うという。『アスリートにとって体の一部である車椅子を、何が何でも制限時間内に修理し、試合を続行させたい。現場はまさにその一心ですね』。近年はアスリートの人生におけるパラリンピックの意味合いは大きく変わってきている。万が一試合が失格となると、人生が変わってしまう可能性さえ大いにあるのだ。『とてもエキサイティングで、とても責任ある仕事だと思っています。いかにアスリートのベストなパフォーマンスを引き出せるか。万が一壊れてもこのスタッフたちがいるから大丈夫だと安心して試合に臨んでもらえる、そういう環境を作ることが私たちの使命だと思っています』。

東京2020パラリンピックで5度目。中島が繰り返し現場へ行くのは、経験を積み、経験を活かすため。そして、どういう状況でも「ポジティブさ」を発揮する、そのための精神を鍛えるためだと中島は語る。『私の捉えているポジティブは、上昇志向や成長意欲という類いのものではなく「色々なことを受け入れる」という態度なんです』現場では、車椅子以外でも、ありとあらゆるものが壊れる。例えば投てき種目で使うアスリートの体を固定するための椅子。時には、アイススレッジの競技用の靴を修理したこともある。『椅子の修理も靴の修理ももちろん専門外ですが、でもよく見たら、これは自分たちの技術を活かせるじゃないかと。どういうことも、ポジティブに捉えて、私たちはベストを尽くします』。

中島がこれまで感じてきたパラリンピックや障がい者スポーツの魅力。東京2020パラリンピックは、その魅力を記事で読むでもなく、人伝いに聞くでもなく、社会全体が直接体験できるチャンスだと中島は語る。『障がい者スポーツは、人間の新たな可能性を圧倒的に感じられるんです。たとえば、「5人制サッカー(別名:ブラインドサッカー)」。なんと彼らは目が見えない状態にも関わらず、フェイントをかけて見事に相手を抜いていく。フェイントをかける方も凄いけど、かけられる方も実は凄い。人間って凄いと気づく瞬間がパラリンピックには本当にたくさんあるんです。そういうことに気づければ、「健常者と障がい者の理解」ということでは決してなく、結局は「個人と個人の理解」なんだということにも気づけるはずなんです』。もちろんメダルも欲しい、が、それよりも何よりも、新たなマインドをこの日本の社会が手に入れることができたら、これ以上素晴らしいことはない。『アスリートと我々がベストを尽くすことで、世界は変わるかもしれない』そう中島は語った。

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