TOKYO2020

支える2020の仕事

山から地域を変える。
日本唯一の
トレイルビルダーの
使命。

トレイルビルダー

浦島 悠太

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「トレイルビルダー」という職種を知る人は日本ではかなり少数なのではないだろうか。マウンテンバイクやトレイルランニング、ハイキングなどで利用するための山の道をデザインし作り上げていく仕事だ。このトレイルビルディングを行うプロフェッショナルは、オセアニアでは合計約30社、イギリスでも30社、北米では150社。世界ではトレイルのサミットも行われているほどメジャーな仕事だが、残念なことに日本ではこの仕事だけをプロフェッショナルとして生業にしている者は、現時点で浦島ひとりしかいない。

『トレイルとの出会いは、アメリカの大学に通っていた学生時代です』。当初は発展途上国などに遊べる環境をつくるNGO活動を目指していた浦島。もともとアウトドアが大好きだった浦島は、アメリカの大自然の中でトレイルに魅了され、方向転換。2年間東京でサラリーマン時代を過ごすが、一念発起し会社を退職して再度アメリカへ旅立った。トレイル文化の薄い日本ではトレイルビルダーの経験を積むことが難しかったからだ。アメリカで国立公園のトレイル整備の仕事を経験し、その後オーストラリアへ仕事の拠点を移す。『ワーキングホリデービザを取得してオーストラリア入国後2日後にはもうヘリコプターの訓練を受けて、その数日後にヘリで現地へ向かい、キャンプしながら9日間トレイルづくりの仕事をする。その繰り返しの毎日でしたね』。オーストラリアのタスマン国立公園にある全長65キロの登山道「スリーケイプストラック」や同じくタスマニア島にある全長80キロのマウンテンバイクコース「ブルーダービー」など、大規模公共事業に携わった経験を引っさげ、浦島は約4年ぶりに日本へ帰国。そして帰国後、いくつかのマウンテンバイクコースを手がける中で、今回の東京2020の仕事と出会う。

『帰国して2年目。しかも東京2020のマウンテンバイククロスカントリー種目は自分の地元の隣町が舞台だったので、縁を感じたし、とても嬉しかったですね』。マウンテンバイクのトレイルはふつうのハイキング道と違って、フローが大切になってくる。走って楽しい、気持ちいいと感じられるようなアートな要素が重要になってくると浦島は言う。『世界のトレイルファンが満足できるもの。興奮できるものを作るという使命感を感じてます。そしてそのコースを、日本人としてアドバイスできる者は一人しかいないという責任感も。でも不思議とプレッシャーは感じていないんです。むしろ思いっきり楽しんでいますね』。

世界ではすでに、マウンテンバイクをひとつのツールとして森林の活用や地域活性に活かしている。オーストラリアの「ブルーダービー」はタスマニア島の町おこしで、人口200人ほどの村に作ったマウンテンバイクコース。完成前、年間利用者がほぼゼロだった山一帯は、オープン3年後には、年間利用者約3万人、経済効果はなんと約15億円にまでのぼった。オーストラリア本土でも、この「ブルーダービー」を見習い、トレイル事業がますます盛んになったと言う。『いま日本には、放置された山がたくさんあります。世界と同じように、日本でも、トレイルをひとつのツールとして森林の活用や地域活性に活かせるはずです』。

トレイルが日本で市民権を得られるにはもうひとつ重要なことがある。道を整備することだけではなく、ルールやマナーといった環境整備もまた大切な課題だ。『世界ではトレイルの多目的利用のための環境整備がとても整っているんです。場所によっては一方通行だったり、マウンテンバイクオンリーだったり、バイクとトレランとハイキング、すべてOKだけど優先順位が決まっている道があったり。そういったサイン整備やルールづくりによって、必ず共存は可能になる。』日本に、トレイルの文化を普及させること。とても時間がかかることだが、これが自分の一生の使命だと、浦島は語った。

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